ししとうの夏

 子どものころの夏休みはいつも鳥取のおばあちゃんちに行っていた。近くの川で魚を捕ったり泳いだりして、疲れたら家で昼寝。昼寝から目が覚めると、裏の山水で冷やしたスイカをおばあちゃんが切ってくれて縁側ですいかの種飛ばし大会。夜ごはんは山陰の魚や畑でとれたとうもろこし、とうふちくわなどをおばあちゃんが出してくれた。
 ある日、夕食にししとうの油炒めがでていた。おばあちゃんがそれを口にいれたとたん
「ああ!またハズレがわたしのとこにきたわ」
と言った。わたしたちがポカンとしているとおじいちゃんが笑い出し
「それはハズレじゃなくて、わしにとっては当たりだわな。あのな、おばあちゃんに辛いししとうがいったんだが、わしはいっつもそれを食べたい食べたいと思っとるだけど、かならずおばあさんとこにいっちゃうだわ。」
と言った。
「からくてたべられないわ。」
おばあちゃんがひとくちかじったししとうをお皿に置いた。おじいちゃんはそのおばあちゃんの残したししとうをつまんで口にほうりこんだ。
「んーうまい!これはやっぱり当たりだわな。」
と言ってもう一度大きい声で笑った。おばあちゃんも笑った。なんだか二人のやりとりがおかしくて、わたしたちも笑った。
 いま二人は天国にいってしまったのだけど、こうしてししとうの油いためを食べるといつも二人の姿が目に浮かんでくる。
 わたしもなんでもないペラッとめくれるくらいの日常のくり返しを大切に生きて生きたい。わたしたちが生まれて来たことを何かに強く刻印するよりも、なんでもなく笑って怒って泣いてほっとして暮らしていきたい。そしていつか風化して土になりたい。
 昨日、出先でししとうをいただき、またふっと思い出した夏の一日でした。
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by ponchimemo | 2013-10-10 23:01 | 日記