20年くらい前、神奈川県の海沿いの道を助手席に元夫を乗せ車で走ってた。しばらく走りながら海を見ていた彼がポツリと
「あー日本は妖精少ないねえ。。。」
と言った。
「え?妖精?いるの?ハムくん見えるの?」
「あー見えるっていうか、感じるっていうか。。でも少ないね。」
とのこと。彼の母国のタンザニアは多いのだそう。何で少ないのか尋ねると
「うーん、多分、日本は信じる人が少ないから。」
と彼。(えーと、信じる人が少ないと少ないという意味は妖精が信じられるを糧にして生きていて、信じる人が少ないから生きられないのか、それとも信じられないと辛いからいなくなるのか。)うーぬ。そういえば北欧の方は信じる人が多いからかトロールの話がたくさんあるよなあ。。
彼の故郷の海辺の町は呪術で有名なところで、今はどうだかわからないが当時は医者より呪術師の方が多いと言っていた。病気を直すのも、夢を叶えるのも、逆に人を貶めるのも、ややもすれば殺すのも呪術でやっていたらしい。その呪術も妖精の力を借りたりするので本当に妖精と繋がった生活だったんだなあと思う。かくいう彼も青年期に若い妖精に入り込まれて、ご飯も食べず、仕事にもいけず、死にそうになったことがあると言っていた。どうしてそんなことになったの?ときいてみるとこういうことだった。
ある日海に行った夜、眠ると夢に綺麗な妖精が出てきた。とても可愛くて気が合いすぐに好きになったそう。そしたら毎晩夢にその妖精が出てくるようになって夢の中で遊んだりご飯食べたりすごく幸せな時間を過ごすからずっと眠くて寝たくて日常生活ができなくなってしまった。しばらくそんな生活をしてだんだん具合が悪くなり、このままいくと命も危ないという話を風の噂にきいて心配したお父さんが彼を呪術師に見せた。するとこれはとても念の強い妖精に入り込まれているからうまくいくかわからないけれど、3日間これを寝る前に飲ませなさいと祈祷した薬を出されたらしい。彼はその妖精に会えなくなるのが悲しくて飲みたくなかったけど、仕方なく薬を3日間飲んで寝た。毎晩、妖精が夢に出てきたけれど、なぜか彼に近づけず、すごく遠い場所でこっちを見ていて泣いていて、3日めにとっても悲しそうな顔をして薄くなり、そして消えたそう。3日目に目を覚ましてからは2度とその妖精は出てこなくなり、彼も日常生活ができるようになったとか。
うーん。不思議な話だ。でもあると思う。というのはタンザニアに行ったから。あの場所のように人間が大地と繋がって生きていればそういうこともあるんだろうなあと思う。
その数年後、日本で大切な友人が病気になった。私はちょうどその頃タンザニアに里帰りをするつもりだったので、ならばその呪術で彼女を助けてもらおうと娘二人とタンザニアに行った。でも、呪術の村へ向かう途中に音楽を体験するため滞在したバガモヨの村で
「呪術で祈ることもできるけど、ここでは人の祈りであなたの友達を助けることができる。どちらを選ぶかはあなたが決めたらいい。」
と言われた。呪いか、祈りか。友達の顔を思い浮かべ、やっぱり祈りがいいとその村の人の祈りにお願いすることにした。
朝からよく晴れのその日、村の人たちが街の中にある教会に集まってくれた。まず、全員で円になり手を繋いだ。神父さんが彼女の写真と服(呪術に必要なので持ってきていた)を持ち、村人に彼女の名前、住んでいる場所、病気のことを伝え、神父さんがスワヒリ語で多分「○○さんは治り、元気になって生きていきます。神様、お願いします。彼女をお助けください。」みたいなことを喋り始めると、手を繋いだ人々が口々にあったこともない友人の名前を叫び祈り始めた。私も、私の娘たちも心から彼女のことを思い祈り、みんなの祈りが交錯して登り始め、どのぐらいだろう?みんなの声が共鳴して一つの大きな祈りの塊みたいになっていて最後にわーっと彼女の名前を同時に叫んだ!!すると
ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
天に穴が開いたのか?!と思うほどの雨が降ってきた。さっきまで雲ひとつない晴れだったのに。
私はびっくりして顔を上げると神父さんが
「ああ、祈りは通じました。天と地を雨が繋いでいます。」
と。ああ本当に通じたんだ、と思えた瞬間だった。その後、友達は元気になった。モチロンそれが理由かはわからないし、でも元気になってよかった!!!
目に見えるものが全てでもなく目に見えないものが全てでもない。でも。でもあるんだと思う。私たちが判っていると思っていることを超える何かが。
それを信じる余白を自分に残しつつ、これからも生きて生きたいなあと思った体験だった。
私はそこまでスワヒリ語はわからないので皆さんの言葉がわかるわけもなく、こんな体験ができたのもいつもケニア在住のガイドの宮城さん(ヤギちゃん)が通訳してくれるからだ。そこに住む人と私たちを繋いでくれるヤギちゃんは生きる雨だね!!ヤギちゃんを浴びて、繋いでくれていつも気持ちいい旅ができる。いつもありがとう!ヤギちゃん!!!!!ああ会いたい!!!!!
アフリカの大地と共に生きてる宮城裕見子さん(ヤギちゃん!)
旅の指指し会話帳 ケニア版の著者でもある!